フランスの特殊印刷事情とグラフィックデザイナーなら知っておきたい製版の重要性

フランス本屋
目次

フランスの本屋は特殊印刷の宝庫

フランスの本屋には、ありとあらゆるサイズや印刷の本が並んでいます。
サイズ展開も特色や特殊加工なども含め、多種多様な手法で本を作成しています。

私は日本で10年間プロとしてグラフィックデザイナーの経験を経て渡仏しました。
紙に印刷するものなら作ったことがないものはないほど様々なものを作成しましたが、フランスに来て特殊印刷が多いことにまず驚きました。

特に子供用の絵本などは特殊印刷の宝庫です。
パリの本屋はグラフィックデザイナーなら1日いても飽きないほど良い刺激を受ける事ができます。

パリのおすすめの絵本が多い本屋

ちなみに私のお勧めの、子供用の絵本などが多い本屋さんはパリのセーブルバビロンにあるChantelivre Bookstore in Parisです。(住所:13 Rue de Sèvres, 75006 Paris, フランス)
サイトも可愛いです。パリ以外にも店舗があるようですね。
ちなみに、Chantelivre Bookstoreのパリ店の近くにあるボンマルシェの本屋さんも面白いです。
可愛い絵本は日本へのお土産にもいいですね!

http://www.chantelivre.com/
ボンマルシェ

特殊印刷にかかるコストと製版データ

なぜ、日本において特殊印刷が少ないのかというと、それは第一に高いから!これに尽きると思います。
特殊印刷を作成する際は、印刷代もそうですが、手間も時間もかかるのでデザイナーの制作費用も高くなります。

頻繁にあるものではないので、クライアントとの打ち合わせ段階で「特殊印刷」というワードを聞くと、私はドキドキします。

私だけではないと思うのですが、グラフィックデザイナーが印刷用データを作成する際には、毎回、かなり慎重かつ緊張感をもって作業をします。この時には誰にも話しかけて欲しくない、電話にも出たくないと思うものです。作業用音楽すら止めます。

なぜなら、失敗すると印刷事故に直結するから。

デザイン事務所勤務時代は、印刷屋さんにデータを渡すまで2人はそれぞれのパソコンでデータを確認していました。そのくらい慎重な作業となります。

グラフィックは、WEBと異なり、印刷してしまうと刷り直しでしか訂正ができないという特性があります。デザインから印刷データを作成するのは「入稿データ作成」や「印刷用フィニッシュデータ作成」といいます。

また、クライアントにデザイン提案する時のデータと、入稿用データは仕様が異なります。

なので、この作業後に、追加訂正があると一から入稿データ作成作業をすることになりますので、クライアントはここまでに訂正が完了しておかないと追加料金がかかる事もありますので注意が必要です。

デザイナーも入稿データ作成後に追加訂正がきた場合は、追加料金がかかる旨をしっかりと説明したほうが良いほどの専門的な作業です。

近年のやすい印刷屋さんは、もらったデータをチェックなしで印刷するところもあるので、印刷データ作成ができるデザイナーに依頼するか、しっかりとデータチェックをしてくれる印刷屋さんを探すのが良いです。

印刷

知らないでは済まされない印刷知識と製版データ作成方法

そして、グラフィックデザイナーはこの特殊加工をデザインに取り入れるためには、製版の知識が必要で、さらに印刷のノウハウがないと適正なデータを作成することができません。
特殊加工でなくとも、通常の印刷データ作成にもノウハウが必要です。
この製版は、イメージ的にはWEBデザインにおいてはコーディング作業にあたります。

具体的な作業は、断ち切りトンボ、塗り足し、適正な画像の配置などがそれにあたります。特殊印刷の場合は、通常のCMYKに加え、特殊印刷用の版をデータに組み込み、指示書をつけて印刷屋さんに出来上がりイメージを伝えます。特殊印刷の場合は、通常の印刷よりも印刷屋さんに渡すデータは複雑です。印刷手法によって、用意するデータは異なります。

紙に印刷する場合は、画面で見るのとは仕上がりの色のイメージが大きく異なるので、どんな紙に印刷するかによって、デザインする段階から完成をイメージし、さらにデザインにマッチし美しく印刷されるようにデザインを考えます。

私もデザイン作成時に、どのような紙にするかも含めて提案します。
ですので、通常の印刷時から、印刷についてどれほど詳しいかによってデザインの可能性や提案できるバリエーションなどが決まってきます。

「画面で見た時と印刷物のイメージが違う!」というクレームはグラフィックデザイナーなら何度か受けた事があるのではないでしょうか。
そのクレーム防止には、クライアントには事前に必ずプリントアウトして確認いただくことが重要です。その際に画面と印刷がどうして色が異なるのか、紙の種類による色の見え方までも説明する必要がありますので、やはりこの時もグラフィックデザイナーにとっては印刷技術が必須知識となります。

そもそも、画面の色を印刷で全く同じに表現するのは不可能なのですが、それがなぜ不可能かを事前にしっかり説明する必要があります。グラフィックデザイナーの説明責任ですね。これを行っておかないと、最悪の場合、刷り直しや値引き交渉をされることもあります。

クライアントが印刷知識が豊富とは限らないですし、多くの場合はそんな事がありません。だからこそグラフィックデザイナーがしっかりと事前に説明する事でトラブル防止となります

フランスで印刷

その他には、印刷用語もグラフィックデザイナーなら知っておくと良い知識です。印刷用語で検索すると様々な用語が出てきますが、vanfuさんの用語集は印刷屋さんならではの印刷やデータ作成時に最低限知っておくべき用語があって良かったです。個人でデザインをする方はここまで知る必要はないかもしれませんが、プロのグラフィックデザイナーならよく使う用語ですので覚えておいたほうが良いです。
vanfu:https://www.vanfu.co.jp/yougo/

印刷カラーのCMYKについても、プロのグラフィックデザイナーならCMYKのパーセントを聞くだけでおおよその色は分かります。

私もフランスに来てからも、パッケージデザインなどで気になるデザインは広げて、色玉のチェックや特色や印刷技法を確認します。開いた時に色玉があるとなぜか安心するのは私だけでしょうか。

どのような印刷屋を選べば良いのか?

印刷屋さんを選ぶにしても、安ければ良いのではなく、仕上がりイメージを伝え、そのための紙や印刷のアドバイスをもらえるところを選ぶ事が重要です。
優れた印刷屋は経験と知識から来るアドバイスをデザイナーに与えてくれます。

「このデザインを生かすには、こちらの紙のほうがオススメですよ。」

「この紙で箔押し印刷は、あまり良い仕上がりにはなりません。」などなど。

グラフィックデザイナーも全ての紙に通じているわけではないので、ここは印刷屋さんと一緒になりイメージに近い印刷方法や紙を検討したりする事も多いです。

また、逆にクライアントが特殊印刷を希望される場合は、それを最大限生かせるデザインと方法を提案し、印刷屋さんにイメージどおりに仕上がるかの打ち合わせもします。結果、クライアントの希望が印刷が難しい場合は、別の提案をする必要があります。

このように、印刷屋は安ければ良いのではなく、デザイナーと一緒になって完成を目指してくれるところを選ぶのが良いです。

私がデザイナー駆け出しの頃、就職したデザイン事務所では印刷屋見学というものが新人の研修に組み込まれていました。実際に印刷のシステムや刷っているところを知る事はグラフィックデザイナーにとって宝です。
もし、そんな機会があったら是非参加してみてください。

フランス印刷

印刷トラブルを避けるには

近年、ロゴなどが自分で作成できるサイトなどもありますが、プロの目からすると、とても印刷に対応できないデザインがあったりするので事故を防ぐためにもやはりデザインの段階において最低限の印刷知識は必須です。

グラフィックデザインにおいてはクライアントに仕上がりイメージを提案し、説明する義務がありますので、クライアントは印刷知識を持っているか否かはデザイナーを選ぶ際の判断基準にすることができます。

印刷知識が豊富なデザイナーは、事前に具体的にクライアントに出来上がりを提案できるので、後のトラブル防止にもなります。

グラフィックデザイナーを目指すなら、製版、印刷についてしっかりと学び、知識を元にクライアントと打ち合わせをしましょう。

フルリールデザイン

【この記事を書いた人】

Kiyomi TANAKA(田中 清美)

・FleurirDesign(フルリールデザイン) 代表/デザイナー・ディレクター
・Paris Design Salon主催

FleurirDesignは、パリを拠点に活動するブランディングデザイン事務所。フランス生活で得た経験を生かし、グラフィックデザイン&WEBデザイン、SEO対策などのトータルデザインを手掛ける。

ParisDesignSalonでは、デザインを通じて世界と繋がる、交流会や勉強会、レッスンも開催中。

フランス本屋

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