日本とフランスでのデザインアイデアのインスピレーションの違い

parisdesign
フルリールデザイン

【この記事を書いた人】

Kiyomi TANAKA(田中 清美)

・FleurirDesign(フルリールデザイン) 代表/デザイナー・ディレクター
・Paris Design Salon主催

FleurirDesignは、パリを拠点に活動するブランディングデザイン事務所。フランス生活で得た経験を生かし、グラフィックデザイン&WEBデザイン、SEO対策などのトータルデザインを手掛ける。

ParisDesignSalonでは、デザインを通じて世界と繋がる、交流会や勉強会、レッスンも開催中。

今日は、私がデザインをする時のインスピレーションについて書いてみようと思います。面白いことに、日本とフランスで異なるのでその違いについて。

目次

日本でのインスピレーションのもと

私は渡仏前10年日本でグラフィックデザインの仕事をしていたと書いたことがありますが、その頃は、事務所に本を持ってきてくれる業者さんがいて、その本を見てのアイデアのインスピレーションを得ていました。

月間アドフラッシュという雑誌があって、優れたデザインを取り上げて掲載しています。そのコンセプトは下記のとおりグラフィックデザイナー向け。

広告、制作、印刷に携わる全ての方々へ:月刊アドフラッシュ

駅、店頭ポスター、雑誌、広告等をピクアップ。また、全国主要な新聞に掲載された新聞広告の中からピックアップし業界別に編集し、広告作品を紹介します。

何度か私のデザインも掲載された事もあります。

アドフラッシュに掲載されるのはグラフィックデザイナーとして名誉な事で、まだデザイナーとして駆け出しだった20代前半の頃などはとても嬉しかったです。(今でも絶対に嬉しいと思う。)

この雑誌の毎号変わる表紙の写真のコンセプトが中面に掲載されているのですが、デザイナーの琴線に触れるような心揺さぶる内容でいつ見ても痺れました。

デザインには色があります。色といってもカラーのほうではありません。

「そのものらしさ」を色といいます。

例えば、食品用のデザイン、健康食品用、旅行用、ファッション用、高級ホテル用、不動産用などなど、それぞれの「らしさ」があります。それを的確に捉え表現する技術や能力がデザイナーは必要になります。

その「らしさ」を優れたデザインを見て感じ取り、自分の中に落とし入れデザインに向かいます。

当たり前だったのですが、日本では、日本語のデザイン雑誌が豊富なので本当に良かったなと海外に出て感じました。

その分、毎年の日本帰国時には毎日のように図書館に行き、借りれるだけデザインの本を借り、たくさんの本を購入してフランスに戻りました。

フランスでのインスピレーションのもと

フランスでのインスピレーションは、 自然の中をひたすら歩いて得ていました。
物事を考える時に歩くのはお勧めです。机に向かって考えるよりも、考えがまとまりやすいらしいです。

まず、大前提としてお客さまから戻ってきたカウンセリングシートを何度も見て、競合他社を調査します。
そこで、デザインの方向性を定め、パリに行き、メトロの広告、街のポスター、店舗などもよく見て、一度、自分の中に多くの情報を取り入れていっぱいにします。

そこから、自然の中を歩く。夏は木漏れ日や風や宝石のような新緑を見るうちに、自分の中で情報が研ぎ澄まされていきます。

秋冬は、歩くたびに音を立てる落ち葉や枯れた枝、湿った土の上を歩きます。日照時間が短いのですが、森の中で差し込む光などを見たりする中でやはり表現すべきデザインが研ぎ澄まされ、方向性やアイデアが湧いてきます。

パリからすぐ郊外のBougivalという、クロードモネやルノワールなどの印象派の画家が好んで住んでいた治安の良い緑が多い美しい町に住んでいた時も、ヴェルサイユに越してからもヴェルサイユの森を歩いていました。

フランスは子供を小学校に送迎するのが義務のようなものだったので、送った後よく森に行っていました。
ヴェルサイユの森には乗馬クラブがあり、よく馬とすれ違っていました。緑の森の中で白馬に遭遇する時はその美しさに見入っていました。

自分がデザインするのに自然が必要だと分かったのはフランスに行ってからです。

自然の美しさは人が作ったものとは異なるもので、印刷やWEBにはない生命力からくる感動があります。自分の制作するものも感動があるものにしたい!と思うことで制作時のモチベーションにもなっています。

娘が産まれてすぐの時に、スペインのサグラダファリミアに行った事があります。その時に見上げるように高かったサクラダファミリアを見た後に、そこから随分離れたグエル公園に行き、そこから遠くにそびえ立つサグラダファミリアを見た時、地上から見上げた時は天に届くかのように見えた建築物も、そこでは天にはとても遠く小さく、それでも天に近づくこうとする未完成の建築物はなんと美しく愛おしいのだろうと思いました。

様々な要素からデザインを考えてゼロから作り上げるのはとても大変な作業で、自然は何も意識せず人に日々多くの感動を与えていると思うと、人の作るデザインは小手先のような気がしますが、だからこそ美しいと私は感じます。

必要なのは観察力と経験値

今あげたデザインのインスピレーションはやはりキッカケにに過ぎません。

一番重要なのは、クライアントのことをどれほど理解し「伝える」ための道順を考えるかです。それはやはり経験からくるものであり、観察力が必要になります。

この根底となるものがなくして、インスピレーションだけあっても本当の意味の良いデザインはできないでしょう。

私が海外に出てデザインの仕事をするなら、基礎が大切だと思うのはそのためです。デザイナーは社会や文化の中でそれに適合した最適解のようなデザインを生み出さねばなりません。

それにはやはり社会経験が必要だと私は思います。また、デザインの受け手側にとって最適解のデザインをするためには、その国の文化や歴史を知る事です。それは、旅行では見えてこない、日々の暮らしの中から肌で感じ取れるものです。それは、1年や2年の留学では得れるものではありません。

その土地に立ち、自分で根を張り自分で稼ぐ事で感じ取れるものは実はとても大きいのです。

例えるなら、日本に旅行に来たデザイナーがいたとします。その人が日本人ってこういうデザイン好きだよねと思ってデザインするものが本当に日本人の心を掴むかというとかなりの確率で難しいと思います。

そのくらい、文化による好みや思考の違いはデザインするにあたって重要です。

私自身も在仏10年を超えて、自分で色々な経験を積む事で見えてきたものがあります。

そして、感じたものを表現する力はやはり経験からくるものだと思います。インスピレーションを生かすも殺すもやはりデザイナーの技術力やデザイン力にかかっています。

有名なブランディングデザイナーさんが依頼を受けたらすぐに海外に飛び、その土地の文化を調査しに行くと何かで読んだことがありますが、まさにデザインするにあたって、その土地を知るというのは重要な要素です。

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